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日本漢方交流会ニュース
金  匱   25

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 日本漢方交流会<難病、慢性病座談会第1回>活動及び内容報告

日本漢方交流会企画部 
中川智代

去る6月29日(日)大阪チサンホテルにて、日本漢方交流会では、初めての試みである<難病、慢性病座談会第一回>が実施された。初めてということで各研究会、理事の先生方には大分ご心配ご協力頂いたが、思ったより、スムースに活発に進み、懇親会にも多数出席いただき有意義な一日であった。 参加者のアンケートでは、全員がまたやって欲しいとの回答で、臨床における討論の必要性を感じた。
また、今回、参加できなかった先生方には、この報告にて内容を少しでも知ってもらい、来年は是非参加していただきたいと思う。

当日は、朝早くから総勢67名が集まり、参加者の熱意が伝わってきた。人数内訳は、御講演頂いた久保道徳先生(近畿大学東洋医学研究所所長)、招待助言者として、広中隆先生(医師 広中内科・東洋医学研究所所長) 小松新平様(栃本天海堂学術部長) 板垣鋭司様(ウチダ和漢薬営業学術室長)4名をはじめ、助言者(鉄村豪先生、西脇平士先生、真鍋立夫先生、太田順康先生、中井康雄先生、池中直先生、村木重信先生、)話題提供者及び参加者として、近畿鍼灸漢方研究会7名、東海漢方協議会9名、京都漢方研究会11名、広島漢方研究会8名、日中医薬研究会関東支部4名、関西支部1名、東京漢方教育研究センター4名、九州漢方研究会2名、岐阜漢方研究会1名、熊本漢方研究会1名、個人会員11名、会員外2名、その他、栃本天海堂(株)、ウチダ和漢薬(株)より、各1名ずつの63名、計67名であった。

プログラムは、予定通り次のように行われた。
       
10:30〜11:30 肝臓病の漢方的治病原則
 近畿大学東洋医学研究所・所長 久保道徳


11:30〜12:15(発表15分・討論30分)
C型肝炎の失敗治験例       話題提供: 東海漢方協議会 奥村裕一


12:15〜1:15 昼食

1:15〜2:15     症例報告
肝炎への経別治療の症例            近畿漢方研究会 夜久泰造


急性アルコール肝炎の自己治験例        京都漢方研究会 中島一仁


肝炎の舌診と腹診                広島漢方研究会 鉄村豪


2:15〜3:00 (発表15分・討論30分)
C型肝炎の難治例              近畿漢方研究会 富田知世子


3:00〜3:15 休憩

3:15〜4:00 (発表15分・討論30分)
あるC型肝炎の症例報告と今後の対策      近畿漢方研究会 西脇平士


4:00〜4:45 (発表30分・討論15分)
肝臓病の食餌療法         日中医薬研究会 落合富雄

午前中一番の久保先生による肝臓病の漢方的治病原則は、アルコール性肝炎から始まって、脂肪肝、B型慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌の治療法について先生の研究成果を交えて講義いただいた。中でも、印象に残ったのは、五味子がGOT,GPTを下げるということで中国では堂々と肝炎の治療薬として使っているが、それは見かけ上のことであり、五味子の成分がGOT,GPTと結合して捨てているだけで、肝障害は治っていないというものだった。
続いて会員による発表で、今回は、成功例ではなく失敗例を出して、討論するというスタイルを試みた。C型肝炎についての治療は、色々な考えが出てきて興味深かったが、肝炎ウィルスの対処や、駆お血剤を使う時期や種類、また腹水の対処等、新たな疑問も出て、今後の課題が明白となり各自参考になったと思う。
鉄村先生のスライドによる肝炎の舌診はわかりやすく、また、患者さん自身に腹を押さえさせて腹診するというアイディアには感心させられた。
成功例としての、症例報告もあり、その考察で、大柴胡湯と、小柴胡湯を使う根拠は体格の違いというのではなく、肝炎ウィルスがどこにいるのかで使い分けるという、広中先生の話は説得力があった。また、栃本天海堂の学術部長からは、現実の枳殻と枳実の違いや、その他生薬について専門的な立場から説明を受けた。
いろいろな話が出てとてもこの場では書ききれなく、ほんの一部しか伝えられなくて残念だが、様々な立場、考えが飛び交い、あっという間に時間が過ぎてしまった感じである。もっと討論の時間が欲しかったという意見も多く、いかに皆が本音の話が聞きたがっているかが窺がえた。今後も日本漢方交流会の活動として、皆で盛り上げ、実りある座談会にしていきたいと思う。

難病慢性病座談会に出席して
近畿鍼灸漢方研究会   池中直

本会の講師の先生方の発表は良く理解出来わかり易かったと思います。有難う御座いました。
さて、漢方の処方の決定は随証治療ではないでしょうか。本会のテーマのC型肝炎とは西洋医学の名称で・・・
漢方薬処方するにしてもつい西洋的病名にまどわされている様に思われます。
やはり漢方は四診によってはじめられます。
その為に漢方相談カードに記載しその上で座談会を行っていただきたいものです。
私はいつも思っていますが、病器を治すのではなく病気を治し病人を治すのが本来のすがたと考えております。
肝炎は気血水の上に立って診断すると血に属する事が多いと考えます。よって漢方処方の中で血剤に属する薬方を考え合わせて見てはどうでしょうか。
今後難病にとりくむにしても漢方的診断の上に立って処方決定をすべきで西洋医学的病名に惑わされる事なく診察を行いたいものです。

日本漢方交流会難病慢性病座談会に出席して
石川  中村正人

昨年11月23日、全国学術総会東京大会に初めて出席させていただきました。東京理科大学薬学部に在籍中、長沢元夫先生の研究室ではたいへんお世話になりました。卒業後すぐに家業の漢方薬店を漢方薬局として開局、未だ経験の浅い中で、何とかやって来れたのは、長沢研究室で漢方の勉強法を習得できたお陰と今もって感謝しております。その研究室の先輩にあたります中川智代さんからお誘いいただきまして、出席、入会させていただいた次第です。従来、日本東洋医学会など医師中心の学会に参加する機会はありましたが、自分の中で本音で考えたり感じたりすることを共有する場ではありません。東京大会では、まさに自分たちの手作りの会という印象が強く残っています。こんなアットホームな学術団体があること自体予想もしておりませんでした。日頃自分が危惧したり、疑問に思っていることを共有している方々が集まっているということは、たいへん心強いことであります。そのような絵画一年に一度の学術総会しか開かれていないのはもったいないことであります。お世話される企画部の方々のご苦労が慮れるところでありますが、今回の難病、慢性病座談会はたいへん有意義でありました。久保道徳先生の講演はいつも必ず新しいヒントを与えてくれます。話題提供者のフィンガーテストによる、薬用量と処方の決定は新しい方向性への示唆として受け取りました。今回はC型肝炎がテーマでしたが、肝機能の保養はさることながら、免疫の活性化と直接的な肝炎ウィルスの駆除に対する試みが討議できたらと私を含めて反省しております。今後、このような討論会を地道に続けていくことで、幅の広い漢方療法がわれわれ会員一人一人の力とならんことを切望するものであります。ありがとうございました。

鉄村豪会長逝去

日本漢方交流会会長・鉄村豪先生は平成15年7月17日、小脳出血による脳幹圧迫が原因でお亡くなりになりました。83歳でした。
日本漢方交流会前身の西日本漢方交流会創設時(昭和43年、広島で第一回大会)から運営に携わり、亡くなられる寸前まで日本漢方交流会の発展にご尽力くださいました。
鉄村会長のご冥福を心よりお祈りいたします。

広報担当からのお知らせ
●日本漢方交流会ホームページに会員専用のページを作成しております。
平成15年7月編集